脳の老化、認知症
認知症とは
認知症(痴呆症)は、後天的な脳の障害により、いったん正常に発達した知能が低下した状態をいいます
(先天的なものは知的障害といいます)。 認知症(痴呆症)でよくみられる精神状態は、 ●本来の性格がより強固なものとなり自制がきかなくなったり、もともと穏やかな人が正反対に逆転したりするので、人格変化したと思われる。 ●「自分のものを盗られた」「テレビの中の人物が実際にいるように勘違いする」「浮気をしている」などと幻覚や妄想が日常的に起こる。 ●意識や認識に齟齬が生じ、時間や場所、状況がわからなくなったりする。 ●漠然とした不安、これからどうなるのかという焦燥などが高じ、家族のあとを追ったり、攻撃的な行動に出たり、号泣したりする。 ●睡眠リズムが乱れ、夜は眠れなく、日中はウトウトとする。 |
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また、特徴的な行動は ●食べ物でないものを食べたりする異食や満腹感がなかったり食べた事自体を忘れて何度も食べたりする過食などがみられる。 ●トイレの位置がわからなくなったり間に合わなくなったりする尿失禁、便失禁が頻発する。 ●見当識や記憶障害のために場所の認知や判断ができなくなり徘徊する。 ●末期になると理解力・判断力が失われ他人との会話はもはや成立せず、感情も失われ無欲・無動状態となる。 |
中医学的な考え方
中医学での認知症に対するキーワードは竅(きょう、あなという意味)です。
精神・意識・情緒などを司る中枢部分へ通じるあなが塞がっている為起こる、ということです。 あなをふさいでしまう原因となるものの第一は「痰」(水分代謝の悪化によって生じた病理的な水分)、二番目は「お」(血液の微小循環の停滞)であり、これら病理的産物を生じる主な原因としては老化からくる「元気」の不足が挙げられます。 また、強いストレスが永く続くと、空気を圧縮した時の様に体の中に「火」を生じ、「火」は水分や血液を煮詰め「痰」や「お」を生成します。 つまり中医学で考える認知症の予防は、これらの「痰」や「お」を作りださないように事前に注意をし、出来てしまったものは取り除く、つまり化痰・清熱し、あなを開いてあげることに注力します。 化痰(痰を取り除く)作用のある処方としては「星火温胆湯」、清熱(熱をさます)処方としては、黄連解毒湯、開竅の目的で使用する生薬は芳香性の強い霊猫香(ジャコウネコの分泌物)や牛黄(牛の胆石)等で、これらをひとりひとりの症状や状態にあわせて単独または組み合わせて活用していきます。 普段から血液の流れを良くする冠元顆粒などが必要になる場合もあります。 老化からくる「元気」の不足には海馬補腎丸や双料参茸丸を用いることもあります。 |
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何年前だったか朝日、読売各新聞に、「脳循環、代謝改善剤の承認取り消し」の記事がのりました。
つまり効果が期待できないということです。 当時主な4製剤の総売上げがなんと八千七百五十億円という額でした。他の同種31品目に関しても再評価が進められています。また数日後には「糖尿病合併症に使用されている人気治療薬の有効性に疑問」という記事が読売新聞にのりました。これが一年間約260億円の売上げといいます。人気といっても飲んでいる患者さん自身に気に入られているわけではなく、医師が処方するので信用して飲んでいるというのが現状です。効果が疑問だけなら何とか我慢できますが、何年も飲み続けた結果、副作用がでるということも有り得ます。 実際のところ、脳血管障害の後遺症や認知症の患者さんには決め手がないのが現状で、中成薬(漢方薬)の国、中国でも研究がさかんです。 脳の老化には、脳血管の老化による脳血流量の減少、また脂質を主成分とする細胞膜の酸化による脳の神経細胞の機能障害が関係しています。 脳の働きをみるのには脳のエネルギー源であるブドウ糖に放射性元素をラベルしてその取り込みの状態をみるようです。 また認知モデルのマウスではSOD(スーパーオキディスムターゼ)の活性が低下しており、低下すると細胞膜の酸化が進み、神経細胞が破壊されてしまうという結果が出ています。中国でもこれらの循環器系の疾病が増え、脳血流量を増やし、SOD酵素の活性化に効果のある生薬の組み合わせを国家プロジェクトで研究しました。 |
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その結果、丹参という生薬を主成分とした冠心2号方という処方が完成しました。 華西医科大学では、これを改良し冠元顆粒という商品で日本に輸入されています。日本では高血圧の治療薬として許可されています。 上記疾患の予防薬として、応用の可能性は十分考えられます。 |
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